これまで著作権の取り扱いを理解するためのエントリーを投稿してきました。
過去エントリ→クリエイター・ブロガーのお悩み解決!著作権チャートとオススメ書籍
今回お届けするのは、ここ数年で話題になった著作権のニュース。
ウェブサービスや漫画、ブログ、JASRAC、TPP、、個人の利用から世界のビジネスシーンまで幅広く関係している著作権ですが、
アイデアやクリエイティブの価値が高まっているこの時代ではしっかりと著作権ニュースを咀嚼できなくてはなりません。
さっそくですがニュースに行きましょうか
目次
☑音楽ストリーミングサイトGroovesharkの閉鎖
参考記事:無料うたった音楽ストリーミング「Grooveshark」閉鎖 「音楽好きなら許諾済みサービス使って」と謝罪
今年4月末、アメリカの音楽ストリーミングサイトGroovesharkが閉鎖しました。
Groovesharkは、ユーザーが市販の音楽CDをアップロードし、その音楽を他ユーザーが自由に聴けるというサービスです。
どう考えても著作権的にアウトなサービスでした。
実際に閉鎖の原因は、日本の大手レーベルが訴えを起こし、和解条件としてサイトの終了があったとされています。
なぜアメリカのサービスなのに日本のレーベルが相手取ったかと言いますと、
実はこのGroovesharkはアメリカの大手レーベルとは著作権の包括契約を行なっていたのです。
なので、本国アメリカではアップロードされるような音楽にはちゃんとお金は支払われていましたし、購買に繋がる広告性もありました。
しかしながら、日本のレーベルないしはJASRACとは包括契約を行わずにサービスを続けていたため、このような結果になりました。
音楽のウェブサービスで皆さんご存知の youtube や ニコニコ動画 は、JASRACなどと包括契約を行なっているため、
ユーザーが市販の楽曲をアップロードしても問題はない仕組みになっています。
万が一問題があっても、ユーザーへの罰則は基本的になく、動画の削除などによって処理されます。
法の整備をしっかりとしているから著作権的に問題がありそうなサービスも継続できているんですね。
☑JASRACに独占禁止法違反確定
参考記事:JASRACは「市場参入妨害」 音楽著作権管理で最高裁判決 公取委、独禁法違反の可否判断へ
今年4月末の記事。
先ほどの話にも出てきた包括契約に関連します。少し説明します。
実はテレビやラジオの放送局はJASRACと包括徴収方式という契約を結んでおります。
この契約を結ぶことで、放送事業収入の1.5%をJASRACに払えば、JASRACの管理する楽曲を自由に使うことができます。
逆に言えば、放送業界はにJASRACが管理している楽曲だけを利用するのが基本と言えます。
だって、管理されていない楽曲を使って、個別に著作物使用料を払う手間なんて面倒ですもん。
(もしかしたら、どうせ管理会社はJASRACだろうと管理元を確認にせず使い、結果的にJASRACだけにお金が行っているなんてこともあるかもしれません)
だからこそ今回の訴えが起きました。
著作権の管理会社は最大手であるJASRAC以外にもあるようなのですが、そのうちの一つであるイーライセンスという会社が
「包括契約してたらJASRAC以外の楽曲が使われないじゃないか!」と怒り、結果的に勝訴したわけです。
とはいえ、日本で使われる楽曲のほとんどはJASRACが握ってますから、うまくこの辺りをまとめるシステムを考えるのは難しいよなーと思います。
☑店内で勝手にBGMはダメ!JASRACが全国258施設に法的措置
参考記事:無断でBGMダメ! JASRAC法的措置に店は困惑
今年6月上旬のニュース。なうです。
またJASRACです笑
そしてまた包括契約です笑
実は包括契約は放送業界だけが相手ではありません。個人のお店でも包括契約できます。
500m^2の商業施設であれば年間6000円(月500円)で、音楽流し放題です。(結構安い)
この契約を知ってか知らずか、契約を結ばずに営利目的で音楽を流していたからJASRACが法的措置に出た訳です。
ネット上ではJASRACは嫌われているので、法的措置に出たことについてかなり荒れましたが、著作権を考えれば当然の対応です。
ちなみに店内でBGMを無料で使うための良い記事がありましたのでご紹介します。結論から言えばラジオを流しましょう。
店でBGMを流したいがJASRACに金を払いたくない場合にはどうしたらよいか
JASRACについての詳細は公式サイトを見たほうが良いでしょう。
煩雑ですが様々なケースに対応した支払いができます。
公式サイト→ http://www.jasrac.or.jp/
☑TPPで著作権の取り扱いが大きく変わるかもしれない
参考記事:TPPで著作権が暴走か?コミケも職場のコピーもダメになる
今年3月末の記事ですが、現在進行形の問題。
農産物などで話題になるTPPですが、著作権でもかなり難航しています。
理由はアメリカの著作権規定はかなり厳しく、日本の文化に合わないから。
アメリカの主張によって大きく変化するのは次の3点。
「保護期間の延長」「非親告罪化」「法定賠償金」
特に面倒なのが、非親告罪化。
日本の著作権法は親告罪です。
これまでのエントリー(これで安心!ブロガーもクリエイターも得する著作権の考え方(後編))でも勉強してきました。
日本は著作権的にグレー領域が広いですが、著者の寛大な心によってグレー領域の活動が守られてきました。
それによって、コスプレやコミケ、イラストなどの二次創作を軸としたサブカルチャーが成長しました。
しかしながら、非親告罪化すると、著者が寛大に許していても警察が勝手に「これアカンな、逮捕や」とクリエイターを潰すことができます。
あるいは第三者が「あの作品あきませんで」と警察に告げ口することで、クリエイターを潰すことができます。
そうすると必然的に萎縮しちゃうんですね。せっかくのクールジャパンなのに。
クリエイティブなことだけじゃなくても、色々問題は出てきます。
詳しくは記事元を読んでください。
アメリカ様の言いなりになると、日本の創作分野は停滞する可能性があります。
☑漫画にゲームキャラ出してたら販売中止になった!ハイスコアガール事件
2014年夏からの事件。おそらく今も裁判中
ハイスコアガールはゲーム好きの少年少女が織りなすラブコメディ漫画です。
その漫画内に実在のゲームキャラを登場させた結果、ゲームキャラの著作権を持つ企業が漫画販売元のスクエニそして漫画家の押切蓮介氏に対し「無断でキャラ使ったから刑事罰だ!」と訴えを起こした事件。
現在、販売中止のうえ単行本の回収を行なったが、「そもそも著作権侵害はなかった」と確認する訴訟をスクエニ側が出して話し合いを行なっている状態。
ちなみに多くの著作権関連学者や弁護士などが「刑事罰として判例を出すべきでない」と声明を挙げています。
この事件、何が悪かったのかというと、漫画制作側のスクエニ・編集・担当、そして漫画家の誰もがゲームキャラの版権について確認を取っていなかった。だから「無断で使用」したという事態になったんです。
漫画制作側に落ち度があったことは間違いないです。
ただ、なぜ多くの学者が反対声明を出しているかと言うと、漫画におけるゲームキャラの使い方が「悪用ではない」から。
ゲームキャラの名を借りて世に売り出しているわけでもなく、キャラの名誉を傷つける使い方でもなく、キャラを使うことで版権者の財産を侵害する結果にもなっていません。
だからこそ、この事件を刑事罰として処してしまうと創作活動の萎縮が懸念されるのです。
非常に微妙なラインですが、
相手に実際的な損失がなくても裁判沙汰になりうるという著作権の難しさが出ている事件だと思います。
☑アメブロに投稿した内容は運営元に著作権がある。そんなのってアリ?
参考記事:(追記あり)アメブロで著作権や肖像権を主張するのはお門違い
今年5月のニュース。
アメブロ(アメーバブログ)といえば、悪名高い日本の大手ブログサイトです。
その運営元はIT企業のサイバーエージェント。バイラルメディアであるspotlightの運営やSNSのアメーバピグの事業を行っています。
このニュースは、カンタンに説明すると
あるユーザーがアメブロに記事を投稿→サイバーエージェントが記事の内容をパクってspotlightに掲載→ユーザーが怒る→でもそもそもアメブロの規約には「アメブロへの投稿記事はサイバーエージェントが自由に使っていい」と載っている。アメブロユーザーということはこの規約に同意してるんですよ→そんなのアリかよ!
というニュース。
記事元を読んでもらえればわかりますが、無料ブログサービスはどこも似たり寄ったりで「投稿された記事の一部著作権は私たちにも譲渡していただきます」という内容です。
twitterやfacebookもそうです。
プライバシーのエントリー(情報プライバシーについて、気になる3つのニュース)でも書いたことがありますが、ウェブサービスの規約は運営会社のリスクヘッジも兼ねて結構図々しい内容なのです。
無料でウェブサービスを使えるというのは、無料な代わりに何かしらを運営会社に提供しているんですね。
まとめ
いかがでしたか。
ニュースそのものを知らないとなかなか難しくてササッとは読めないエントリーになってしまいました。
本ブログでは著作権について「相手が怒るようなことなら使うのを止めておくのが賢明」と伝えてきました。
一方で、グレー領域で活発な創作活動が行われていることや上手に著作権と付き合うことの大切さも説いてきました。
上記のニュースをまとめ読みすると、改めて「契約」や「確認」の大事さがわかります。
個人がカンタンにモノを生み出せる時代、そして発信できる時代。
それは誰かの著作物を使う機会が多いことを示し、同時に自分の著作物が誰かに使われる機会も増えるということを示します。
マナー・モラルが大事ですが、法律上の問題ですのでしっかりと理解して付き合いたいですね。
この記事を書いた人
- おかさか・りょうた/理事長
- 新温泉町出身、在住。
大学進学で東京へ行き、理系の大学なのになぜかメディアアートや広告を勉強する。卒業後、帰ってきてNPO法人あっと但馬を立ち上げた。
ブログではネット活用をメインにアイデアの種や地域活性化の種をバラまき続けている。
趣味が多い。マウンテンバイクなどのアウトドアから陶磁器集めなどのインドアまで幅広いので、ブログのネタにしたいけど読者に求められていないので控えている。
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